自己評価は何によって作られるのか

自己評価は何によって作られるのか

 

 

自己評価、よく聞く単語ではあると思います。

 

大人になってからも、失敗したり、なんだかうまくいかないな、ということが続けば凹みますし、自己評価が下がる、ということはあると思います。

自信がなくなって、失敗したことと同じこと、似ていること、違うけどやったことないこと、に挑戦することが難しくなることがあるかもしれません。

 

自分を卑下したりしてしまうかもしれません。

 

もちろんこういうのも自己評価という言葉の持つ意味にはなると思います。

 

 

しかしもっと根源的な意味で精神科では自己評価というものを考えることがあります。

 

単語でいうと、基本的信頼感、という感じで使われることもあります。

 

 

これは、

「自分は今の自分でいいんだ」

 

ありのままの自分でも認められている、大丈夫なのだ、という感覚です。

 

 

精神科には時に、このような感覚が乏しい人が来られます。

または精神科にはこなくても、基本的信頼感が乏しいまま、日常生活を送っている人がいます。

 

病院には具体的な症状や、日常生活に何か支障がなければこないですし、支障があっても我慢していたり、いくのをためらったりして、来ない方もいると思います。

 

基本的信頼感というのは、生まれてから養育者との間で築かれていくものです。

 

逆に養育者との関係が、あまりいいものでなければ、基本的信頼感、が希薄になってしまうことがあります。

 

赤ちゃんは自分では何もできません。食事も、着替えも、排せつも、移動も、何もかもを養育者に依存した状態です。

3歳くらいになるまでは、とにかく自分だけではできないことが多いです。

 

そうなると、おなかが減ったけど、食事はもらえない

おしっこをしておむつが不快だけど、かえてもらえない

泣いても、あやしてもらえない

何か要求のサインを出すと、怒られる、無視される

 

などなど

 

このような生育環境が続いてしまうと、「自分はありのままでも愛されているんだ、必要とされているんだ」という感覚は育ちにくくなります。

こういう生育環境を、不認証環境、とも表現します。

 

自己評価はかなり低い状態が幼少期より発生しているわけです。

 

程度の差はあれど、このような環境で育った子には、ある程度共通する特徴がでてきます。

 

まず、とにかく我慢強い、です。

 

すべからく子どもは安定した養育者を好みます。養育者が例えば母親であれば、母親が安定するように子どもは行動しがちです。

 

生まれつきの気質にも左右はされますが、不認証環境で育った子どもは、養育者の顔色をうかがうことが多くなるため、我慢つよく、気が利く、ようになります。

 

我慢強く、気が利く

この単語だけみると、強みにも見えますが、後天的に獲得した強さという意味では間違っていません。その子の一つの力にもなりえます。

しかしそれは不認証環境という二次的な要因で獲得した力であり、基本的信頼感を犠牲にして手にしたといったところでしょうか。

いいのか、悪いのかは、人によって違うでしょう。しかし子どもは生育環境を自分では選べません。

 

幼児期より我慢することが多く、他者に頼ったり、依存したりすることがほとんどないと、もちろん大人になってもその傾向は変わりません

 

我慢強いため、なかなか受診にもつながらないタイプです。よほど学生の時に、症状が体にでれば発見されることもありますが、基本的には少しの不調ならば我慢して大人になってしまいます。

 

つまり、症状がでない、大したことないから、精神的に調子が悪くないわけではないというわけです。むしろ本質的な精神的な病態が悪いほど、症状もでにくいわけです。他人に頼るのは苦手ですから、受診もその流れにありますので、なかなか来ないでしょう。

 

例えば自傷行為、とは自分だけで問題を解決しようとした結果の行動であることが多いです。痛みや出血は、自分への罰になりますから。自分の存在自体が誰かに迷惑をかけていると思っている人は、罰があった方が心が安定することがあります。

 

そういう人の自傷行為は、なんでそんなことするんだ、と怒るだけでは、ほんとに困ったときの選択肢を一つ奪うだけとなります。怒るのがだめではないのですが、それだけではだめということです。

 

精神科には、診断書に書いている病気はたくさんありますが、表面的な病名がなんだったとしても、本質的な調子の悪さは病名では測れないということです。病名がつかないけど、めちゃめちゃ具合が悪い人はいるわけです。

 

といっても、先ほど書いたよに、そういう人ほど受診しないんですけどね。

 

もし受診したとしたら、この基本的信頼感が欠如していることをまずは認識させたのち、これを獲得するための作業を行っていくことになります。

医師や心理士と最初は練習していって、その感覚を実際に本人が所属しているコミュニティーにも広げなくてはいけないので、かなり時間かかります。

診察室の中でだけ2者関係が成立していても、それが本人がいる社会で再現されなければ意味がありません。

 

とまあ、自己評価というテーマで色々と書いてみました。

 

こういう方は病院で会うことは少ないですが、自分の周りで見つけることはあります。我慢強さ、気が利く、とかは大人になれば一つのパワーになりますから、うまく使っている人もいます。

 

三つ子の魂百まで、なんてコトワザありますが、3歳という年齢を使っているのが、見事だと思います。

0歳~3歳までの生育歴が、児童精神科でも非常に重要だと考えているからです。3歳までに、色々な心の機能が固定されてくる、感じはあります。

 

医療法人永朋会

https://wako-psy-clinic.com/

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